庵野秀明監督「エヴァ:Qの公開後、僕は壊れました。鬱状態となりました」
我々は、何をまた作ろうとしているのか。
そして何故、空想特撮映画を作る事を決めたのか。
2012年12月。エヴァ:Qの公開後、僕は壊れました。
所謂、鬱状態となりました。
6年間、自分の魂を削って再びエヴァを作っていた事への、当然の報いでした。
明けた2013年。その一年間は精神的な負の波が何度も揺れ戻してくる年でした。自分が代表を務め、自分が作品を背負っているスタジオにただの1度も近づく事が出来ませんでした。
他者や世間との関係性がおかしくなり、まるで回復しない疲労困憊も手伝って、ズブズブと精神的な不安定感に取り込まれていきました。
その間、様々な方々に迷惑をかけました。
が、妻や友人らの御蔭で、この世に留まる事が出来、宮崎駿氏に頼まれた声の仕事がアニメ制作へのしがみつき行為として機能した事や、友人らが僕のアニメファンの源になっていた作品の新作をその時期に作っていてくれた御蔭で、アニメーションから心が離れずにすみました。友人が続けている戦隊シリーズも、特撮ファンとしての心の支えになっていました。
同年11月。鷺巣詩郎氏のPV制作をヒントにアニメの短編集企画を思い付いたのも、なんとかアニメの面白さを今一度、体感し、アニメが好きだった事を今一度、確認し、アニメの現場に戻る拠り所を今一度、切望したかったからです。それと、エヴァの制作で疲弊していたスタッフやスタジオにも、エヴァ以外の新企画が必要と感じたからでした。この試みは、日本アニメ(ーター)見本市として現在も継続し、やって良かったと実感しています。
2014年初頭。ようやくスタジオに戻る事が出来ました。それから、1年以上かけた心のリハビリにより徐々にアニメの仕事に戻っています。同年10月に行われた東京国際映画祭の特集企画で、高校時代から自分の作ってきた作品を、素直に振り返れた事も幸いしました。
そして、2015年。旧エヴァの放送から20年後の今、すでに2年以上もお待たせしている、シン・エヴァンゲリオン劇場版の完成への実現に向けた作業も、なんとか進められています。
僕の周囲の方々、そしてアニメファンの皆様が、再び完結に向かうというモチベーションを支えてくれているからです。本当に、感謝します。
そして、皆様から、シン・エヴァの公開まで今しばらくの時間をいただければ、幸いです。
と、同時に今は、空想特撮映画を形にする作業も行っています。
<中略>
制作者が何を書いても言い訳にしか過ぎず、善意と悪意の前に晒される事態を重々承知の上で、こんな時代のこの国で日本を代表する空想特撮作品を背負って作る、という事を少しでも理解していただけたらという願いから、拙文を寄せています。
最後に、自分を支えてくれる周囲の人々と、作品を支えてくれているファン・観客の皆様の御蔭で再び、映像が作れる、という事に改めて感謝します。
まさか鬱になっていたとは…まぁエヴァだし、気長に待ちますよ
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