アダルトゲーム出身作家が活躍する構図は「ロマンポルノ」と一緒
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先日アニメ化された『人類は衰退しました』(小学館ガガガ文庫)の原作者・田中ロミオ氏も、アダルトゲーム業界の出身者だ
アニメ界では今、成人向けPCゲームのシナリオライター出身者によるライトノベル(ラノベ)原作が映像化され、人気となる現象が起こっている。
例えば『Fate/Zero』原作の虚淵玄、『人類は衰退しました』原作の田中ロミオ、『だから僕は、Hができない』原作の橘ぱんなどは、みなアダルトゲームメーカーでのシナリオ担当経験を持っている。アダルトゲーム業界や「18禁」表現を含む同人ゲームの業界からラノベの世界に転身した作家はほかにも多く、昨今のラノベ業界には、いわば「アダルトゲーム派」とでもいうべき作家たちの一群が形成されつつある。
なぜ、そんな現象が起きているのか。かつてアダルトゲーム業界でディレクターを務めていた松村俊之氏(仮名)は、昨今のアダルトゲーム出身作家たちの台頭の背景をこう説明する。
「かつて、フィクションを創作することでプロの物書きになろうと考えていた人の多くは、小説を書くしかなかったわけです。ところが1990年代の中盤から、アドベンチャーゲーム(AVG)という新たな表現の選択肢が生まれた。結果、情報感度の高い物書き志望者の一部が、ゲーム業界に流入するようになったんです」
当時、日本のゲーム業界に革命を起こしたのが『弟切草』(1992年)や『かまいたちの夜』(1994年)といった「サウンドノベル」と呼ばれる新形式のAVG。これはプレイヤーが画面上に表示されたテキストを読み、シナリオの分岐を楽しむもの。このジャンルは、やがてフルカラーの美しいCGを背景に組み合わせることで、さらなる進化を遂げることになる。
「サウンドノベルの表現形式と、『美少女の画像を見せてナンボ』であるPC向けのアダルトゲームは、ものすごく相性がよかったんです。結果、この分野でAVGの名作が次々と生まれました」(松村氏)
間もなく、アダルトゲーム界のビッグタイトルが、次々と10万本クラスの大ヒットを飛ばす。これらは、画像と物語を同時に楽しめるゲームとして「ビジュアルノベル」という新ジャンルを確立。やがて、同人業界においても『月姫』(2000年)など、商業作品と比べて遜色がないクオリティの名作ゲームが次々と登場することになった。その背景には、AVGというゲームジャンルならではの開発面での「敷居の低さ」も大きく関係していたようだ。前出の松村氏は語る。
「ほかのゲームに比べて、ビジュアルノベルはスクリプト(ソフトを動作させる簡易プログラム)を組むのが簡単で、デバッグ(動作確認)の苦労が少ないんです。材料となるCGと音楽とテキストがそろっていれば、零細企業や同人サークルでも“名作”と呼ばれるゲームを生み出すことが可能でした」
優秀なクリエイターのタマゴたちが、この世界に惹きつけられていったのは当然の成り行きだったともいえる。
「低コストで制作できたことが、シナリオライターたちの表現の幅を広げた面がありました。最低限のエロスさえ押さえておけば、普通のゲームや小説では難しい前衛的な表現から、ベタベタすぎて企画が通りづらい人間ドラマまで、あらゆるストーリーの作品を作ることが許されたんです」(松村氏)
ジャンルは違うが、かつての日本映画業界では、日活ロマンポルノのような低予算のアダルト映画が周防正行氏、滝田洋二郎氏といった後年の名監督を育てた歴史がある。こちらもエッチなシーンを最低限入れておけば、自由な作品作りが許されたためだ。
「ロマンポルノでもアダルトゲームでも、本当に才能がある人は、どんな媒体でデビューしたって結果を出せるんです」(松村氏)
現在のアダルトゲーム出身作家たちの活躍ぶりは、まさにこのことを証明しているといえるだろう。
どこ出身だろうがおもしろければいいんだけどね
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例えば『Fate/Zero』原作の虚淵玄、『人類は衰退しました』原作の田中ロミオ、『だから僕は、Hができない』原作の橘ぱんなどは、みなアダルトゲームメーカーでのシナリオ担当経験を持っている。アダルトゲーム業界や「18禁」表現を含む同人ゲームの業界からラノベの世界に転身した作家はほかにも多く、昨今のラノベ業界には、いわば「アダルトゲーム派」とでもいうべき作家たちの一群が形成されつつある。
なぜ、そんな現象が起きているのか。かつてアダルトゲーム業界でディレクターを務めていた松村俊之氏(仮名)は、昨今のアダルトゲーム出身作家たちの台頭の背景をこう説明する。
「かつて、フィクションを創作することでプロの物書きになろうと考えていた人の多くは、小説を書くしかなかったわけです。ところが1990年代の中盤から、アドベンチャーゲーム(AVG)という新たな表現の選択肢が生まれた。結果、情報感度の高い物書き志望者の一部が、ゲーム業界に流入するようになったんです」
当時、日本のゲーム業界に革命を起こしたのが『弟切草』(1992年)や『かまいたちの夜』(1994年)といった「サウンドノベル」と呼ばれる新形式のAVG。これはプレイヤーが画面上に表示されたテキストを読み、シナリオの分岐を楽しむもの。このジャンルは、やがてフルカラーの美しいCGを背景に組み合わせることで、さらなる進化を遂げることになる。
「サウンドノベルの表現形式と、『美少女の画像を見せてナンボ』であるPC向けのアダルトゲームは、ものすごく相性がよかったんです。結果、この分野でAVGの名作が次々と生まれました」(松村氏)
間もなく、アダルトゲーム界のビッグタイトルが、次々と10万本クラスの大ヒットを飛ばす。これらは、画像と物語を同時に楽しめるゲームとして「ビジュアルノベル」という新ジャンルを確立。やがて、同人業界においても『月姫』(2000年)など、商業作品と比べて遜色がないクオリティの名作ゲームが次々と登場することになった。その背景には、AVGというゲームジャンルならではの開発面での「敷居の低さ」も大きく関係していたようだ。前出の松村氏は語る。
「ほかのゲームに比べて、ビジュアルノベルはスクリプト(ソフトを動作させる簡易プログラム)を組むのが簡単で、デバッグ(動作確認)の苦労が少ないんです。材料となるCGと音楽とテキストがそろっていれば、零細企業や同人サークルでも“名作”と呼ばれるゲームを生み出すことが可能でした」
優秀なクリエイターのタマゴたちが、この世界に惹きつけられていったのは当然の成り行きだったともいえる。
「低コストで制作できたことが、シナリオライターたちの表現の幅を広げた面がありました。最低限のエロスさえ押さえておけば、普通のゲームや小説では難しい前衛的な表現から、ベタベタすぎて企画が通りづらい人間ドラマまで、あらゆるストーリーの作品を作ることが許されたんです」(松村氏)
ジャンルは違うが、かつての日本映画業界では、日活ロマンポルノのような低予算のアダルト映画が周防正行氏、滝田洋二郎氏といった後年の名監督を育てた歴史がある。こちらもエッチなシーンを最低限入れておけば、自由な作品作りが許されたためだ。
「ロマンポルノでもアダルトゲームでも、本当に才能がある人は、どんな媒体でデビューしたって結果を出せるんです」(松村氏)
現在のアダルトゲーム出身作家たちの活躍ぶりは、まさにこのことを証明しているといえるだろう。
どこ出身だろうがおもしろければいいんだけどね
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